環境音楽と電子音楽

本作の特徴として、電子音楽、つまりエレクトロニカを環境音楽として利用している点が挙げられます。

電子音楽やエレクトロニカと聞いて、ピンと来ない方も多いと思います。エレクトロニカの定義は広く、私自身きちんと説明することは難しいのですが、いわゆる打ち込みと呼ばれる、パソコンを利用したデスクトップミュージックのことを総称しています。
デジタルな手法やサウンドを利用した音楽ジャンルといえ、広義ではポスト・ロックやテクノ、アンビエントなども含めることができます。

ではなぜゲーム音楽としてエレクトロニカを利用するのでしょうか?

そもそも環境音楽は、様々な世界や場面を映像と共に表現し、意義付けするものといえます。ここで大事なのは、我々の世界は元より音楽など鳴っていないのですから、環境音楽として利用できる音楽には制限があるということです。

私は環境音楽とはプレイヤーがいない音楽として定義しています。
ミュージカルのようなものは別として、その音楽にはボーカルがいないことはもちろん、演奏を想起させるような楽器の鳴らし方も環境音楽に合っているとは言えません。

つまり表現される世界に存在しえないプレイヤーが、楽曲やトラック上で主張してはいけないのです。
例えば環境音楽においてギターソロが入れば、果たしてそれは成立するでしょうか。
そういった演者を想起させる、アナログな音の対極にあるのが、デジタルを駆使したエレクトロニカだと考えています。

またオーケストラサウンドが、環境音楽として多く使われているのにも理由があります。もちろん歴史的な背景はありますが、大人数で奏でる音楽は演奏者それぞれのキャラクターを薄めることができ、映像の邪魔をすることなく、音楽を届けることができます。
例えば弾き語りとオーケストラではどちらが環境音楽に向くかは、明々白々といえるでしょう。
曲にもよりますが、エレクトロニカにおいても比較的トラック数は多く、この利点を有しているといえ、表現世界を傷つけずに生楽器を利用することができます。

以上のようにエレクトロニカは環境音楽として非常に向きがあるといえ、ゲーム音楽に利用することはとても面白い試みだと思っています。

ただいろいろと理由を上げてはいますが、あまり深く考える必要はないのかもしれません。
いわゆるピコピコ音と呼ばれていた時代から、ゲーム音楽もまた電子音楽の一つと呼べるのですから。