夢というテーマ

数あるテーマの中で、“夢”というテーマを選択することには多くの理由があります。

RPGなどのゲームにおいて特に重要視されるのは自己投影という観点です。
ゲームの主人公という一種のアバターを通して、プレイヤー自らがその世界に入り込むという体験は、他の分野では決して得ることはできません。

しかし物語を描く上で、この自己投影という観点は大きな枷にもなります。
自己投影の概念において、世界を切り取るカメラはプレイヤーの視点に他ならないのですから、演出上で他者の視点を描くことができないといえます。せっかく魅力的なシーンを用意できても、主人公がその場にいなければ描くことすらできないのです。

これを解決するには主人公をそれらの場面に送り込み、他者を映す鏡とする必要があります。これは多くのゲームにおいて難しい問題ですが、“夢”というテーマであれば容易に対処することができます。
つまり“夢”というテーマにおいては、登場人物の夢世界に入り込むことで、彼らの視点やその内面を映すシーンを描くことができます。もちろん回想なども自由に取り入れることができます。

例えば“時”というテーマもゲームにおいて人気がありますが、これも同じ力を持ちます。
強大な敵の計画を描きたいなら、過去や未来に跳び、その場面に遭遇すればよいのです!
他にも互いの絆による意識の共有という発想や、複数の主人公の利用によって、別の視点を用い、この問題をクリアしている作品もあります。

また夢という題材を扱う利点として、自由な映像表現、音楽表現が挙げられます。
どんな作品においても、大元に我々の生きる物理世界がある以上、表現は縛られてしまいます。しかし夢という抽象的なテーマであれば、精神世界のような刹那的で、クリエイティブな表現を可能にすることができます。
ファンタジーというジャンルは今でも根強い人気がありますが、それはやはり体験したことのない不思議に触れることができるからではないでしょうか。

さらに個人制作において、加えて今後の本作の更新をお約束している立場においては、後から新たな舞台やキャラクター、シーンを追加できるような環境が必要です。様々な夢が浮かんでは消える、夢の世界にはこの問題を解決してくれる寛容さがあります。

以上のように、“夢”というテーマは様々な理想的要素を内包しており、非常に描き甲斐のあるテーマといえます。

これらの理由に加え、テーマが表現を左右することについても補足しなければならないでしょう。
本作において夢という言葉は、単に夜にみる夢ということだけを指しているのではありません。言葉では色あせるような青臭いことも含めて、“夢”というテーマはどれだけ時間をかけたとしても、私が本当に表現したいものだと思っています。