環境音楽のいろいろ

主人公のおかれた環境を表現する方法として環境音楽はゲームの他にも映画やアニメなど、様々な作品で用いられますが、そもそも環境を表現するということはどういうことなのでしょうか。
そもそも我々の暮らす日常において、どんなにドラマチックな場面に遭遇したところで、音楽など鳴っていないわけですから、その在り方には一考の余地があるといえます。

私はこの環境音楽は二つに大別できると考えています。
一つは情景を表す環境音楽で、これは世界や空気を表現します。もう一つは感情を表す環境音楽で、これは物語や気分を表現します。

私はゲームにおいては前者の情景を表す環境音楽が上手くマッチするのではないかと考えています。ゲームにはシステムという制約がありますし、特に本作のような冒険ものであれば、訪れる舞台を表現する音楽がふさわしいと考えています。

一方、人の心の動きが流動的であるように、感情を表す環境音楽には映像との同期が重要です。そのため心情を表す音楽表現は映画やアニメなどのように、映像が事前に定められたメディアとの相性が良いでしょう。

ただし夢物語の世界はある意味特殊であり、それぞれのシーンは同時に人々の心象風景でもあるため、状況によって使い分ける必要があります。もちろんイベントシーンなど感情の変化が大きかったり、映像との同期がしやすかったりする場合は後者の表現が大いに役立つはずです。

また情景を表す方法として、直接的な表現と間接的な表現の二つがあります。一つは環境音を利用して直接的に表現するものです。例えば風のせせらぎや虫の音はその情景をダイレクトに連想させます。
もう一つはあえて楽器や音で間接的に表現するものです。例えば深いリバーブのかかったピアノの旋律は海の奥深くを連想させるでしょう。

どちらにも面白味がありますが、個人的には後者の方が作品としての様々な音使いのアイデアが込められており、魅力的に映ります。しかしこれは前者の利用を否定するものではありませんし、環境音を音楽に落とし込むことも当然ながら技術が必要であり、上手く生かせるよう今後も学んでいきたいと考えています。

環境音楽には前述のように色々な見解があるといえますが、理想を言えばゲームの能動性と同期して音楽が変化するようなシステムが望ましいともいえ、例えば音楽をもっと細かな単位に分けて、ゲーム状況に合わせて楽曲を生成するようなアイデアは一考の余地があるでしょう。しかしこれは音楽的・システム的な厳しさに加え、ゲーム史の中で紡がれてきた様々なゲーム音楽のような印象を残すことも難しく、現実的ではないといえます。

環境音楽といってもやはり音楽であり、音楽単体で聴いたときにも楽しめるものであれば理想的でしょう。まだまだ未熟で学ばなければならないことも多くありますが、一歩ずつ夢物語ならではの環境音楽を構築していきたいと思っています。