幻想の定義

夢物語では多くの創作で描かれてきたファンタジー、幻想というテーマを主軸においています。しかし一口に幻想といっても、その言葉は曖昧であり、多様な側面を持ちます。そこで幻想という言葉がどういった意味を持つのか、改めて考察しておきたいと思います。

ファンタジーの対義語がリアリティーであることを考えれば、幻想を現実的でないことと定義するのは自然なことだと思います。このとき、以下のような現実的でない例を明確に把握することで、夢によって大きく外観の変わる、一見突飛な世界に大きな骨組みを作ることができます。

未知の世界
異なる文化や、特殊な環境、専門的な知識、馴染みのない思考や哲学などは現実とは異なる別種の世界を重厚に定義づける。これらは仮想の歴史や舞台によって、新たな言語や民族などと共に形作られる場合もある。

不思議な生命
あり得ないものが生命をもち、また人間でない存在とコミュニケーションをとれるということは空想的な体験となる。その容姿が人間と異なれば異なるほど不思議な感覚は強まる。

非科学的な現象
例えば重力に反して物体が空に浮かべば、従来の科学を越えたこの現象は幻想的であるといえる。場合によってはこれらの概念を新たな科学体系として定義してもよい。また一般的にこれらの現象を指して、魔法などと呼ぶこともあるだろう。

非合理な様相
現実にあるものは、合理的で洗練された姿を伴っている。逆にその姿かたちが不可解であれば、現実の理を外れることができる。これは外面に限らず、突拍子のない発想や、それに伴う行動も、驚きと共に幻想的な世界を演出できる。

制約のない時間
場合によっては時間を飛び越えることでファンタジー世界を自由に映すことができる。これは過去や未来を覗くだけではなく、何世代にも渡る物語の追体験や、創作の常である断片的な場面の投影もここに含まれる。

起こりえない事象
相容れない事象が重なり合う矛盾が、時として虚像の世界を定義づけ、形作ることがある。また実際には起きえない命運や天啓に対し、人は言葉で言い表せない感覚を得る。

どんなファンタジーを描くとしても、その本質的な表現は上記の内容に収束します。これらの要素は時として相反したり、多くの要素を入れすぎるとバランスが崩れてしまったりすることもあり、各シーンにおいてどの要素を主体として用いるかを明確に意図しなければなりません。

夢という広いテーマの上でこれらの核をどう生かすかが、夢物語という作品の中で問われる課題だと思っています。